「映画」「舞台(芝居)」「TVドラマ」「TVゲーム」「特撮」「俳優」「バラエティー」「お笑い芸人」「漫画」「小説」「怪談」など批評、評価、感想、意見、注文、いろいろ書きます。

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「笑の大学」舞台版VS映画版について。その2

2007.12.29
 最初、椿の仕事に対して何の興味も無かった向坂が、どんどん椿の書いている脚本に興味を持ち最後には劇場にまで足を運ぶようになる。向坂の微妙な心境の変化が見て取れるので、舞台版よりも映画版の方がすぐれている。だから映画版の方がいい。

 1日目~4日目まで、実はあまり面白い(笑える)ところが無かった。ところが5日目から一気に私のボルテージは上がった。

 向坂睦男役の役所広司の演技だ。馬鹿の役をやらすと本当に馬鹿に見える。役所広司って、なにやらしても上手い役者だ。(私の中でSランククラスの役者。)

 警官の格好をして走り回るシーンがあるが、あれくらいやってもいいと思う。6日目の最初の場面、役所さん自身が真面目にやればやるほど馬鹿に見えてくる。そこがまたおかしい。

 三谷脚本の「転~結」にかけての上手さが光る。ここからが驚くべき展開を見せる。

 椿が(向坂にわかってもらえると思って)今までの事を吐露するのだが、向坂が共感するどころか、「聞きたくなかったっ!」と逆に声を荒げる。そして「笑いの要素を一切排除して下さい。」と椿に挑戦状を叩きつけるのだ!

 「笑いのない喜劇を書けっ!」確かに出来るわけがない。ところが椿は、「やってみなくちゃわからないだろっ!」と声を張り上げる。椿のモデルは、喜劇王榎本健一(通称エノケン)がモデルといっているが、この台詞を聞いて実は三谷幸喜自身でないかと私は錯覚したのだが。

 向坂と椿の会話に、回想シーンで青空寛太の「猿股失敬っ!」や、モギリのおばさんなどの、ちょっとした場面も小気味いい。

 そして最後の7日目、椿は笑いのない脚本を書いてこないどころか逆に笑いが絶えない脚本を書いてきた。椿に赤紙が来ていたのだ。

 「君の本がもっと読みたい、君の作った舞台が観たい、もっと私を楽しませて欲しいんだ。」と、向坂の台詞があるが「君」というのは三谷自身で、向坂は三谷の望んでいる観客ではないかと思う。私の考えすぎだろうか。

 最後に椿が長い廊下を歩き立ち止まる。向坂かドアを開けて、
 向坂の最後の台詞は感動的だ。「生きて帰って来ーーーい。~~~。大好きなんだ。」 これまた泣けるシーンだ。だから映画版の方がいい。

 4日目の夜、向坂は劇場の前まで行って立ち止まるのだが、そのまま帰る。5日目の夜は劇場に入り上演される演劇を見る。(どういうところなんだろうと、恐る恐る向坂が上演中の舞台に入るまでのシーンの星護監督の撮り方がまた上手い。)7日目の回想場面は、劇場で上演中の作品を観ながら笑っているのではない、泣いているのだ。向坂が観客と同じく笑っていたらこのシーンは台無しだっ!

 「笑う」ということに感動しているのだ。「笑う」ということがなぜ重要なのか。「笑う」ということがいかに人生を豊かにするのか、この向坂は、はじめて気がつくのだ。心の底から笑う、家で、路上で、電車の中で、仕事場で、ベンチのシートで。

 向坂が上演を観て泣いているシーンは本当にいいシーンだ。思わず私も泣いてしまった。 

 向坂の場面を細かく心理描写できる星護監督は、やはり三谷脚本を、よく理解していると思う。これもまた舞台版ではない演出。だから映画版の方がいい。

 瀬戸内寂聴さんをテレビで見て、一言耳にした事がある。「人間は、笑うって事をしなかったら幸せは絶対にやってこない。」なるほど上手い事言うよね~。 

 椅子と机の位置、窓と太陽の光の撮り入れ方も上手い。

 この映画版の評価を一段と上げているのが、音楽の使い方(=挿入の仕方)だ。音楽(曲調)もすばらしい。最近見た映画の中で、これほど音楽が印象に残る作品は珍しい。

 普通の映画ならスタッフロールが流れると、映画館では席をはずして去る人が多いし、DVDで見ているなら早送りだろう。エンディングまで凝りに凝って作っているので最後まで観てしまう。星護監督のセンスの良さを感じる。

 これも舞台版だと、「あれれっ、終わり!?」と西村雅彦と近藤芳正の挨拶で味もそけっもない。音楽があることによって、映画版が非常に印象に残る。だから映画版の方がいい。

 その3も書くよっ!

テーマ : 心に残る映画

ジャンル : 映画

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