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 「THE BEE」(←クリック) ストーリー、解説、スタッフなどが読めます。

 少しだけストーリーを書くと、そこらへんの平凡なビジネスマン・(主人公)イドが、脱獄犯に妻と子供を人質にとられた報復に、逆に脱獄犯の妻と子供を人質にとり復讐するというストーリー。

 「日本バージョン」と「ロンドンバージョン」と、どちらが良いか?と問われたら日本バージョンの方を選ぶだろう。甲乙つけ難いが、こればかりは好みの問題。

 なぜ日本バージョンを選んだのかは、背景、美術では日本バージョンの方が、この題名と同じく「シンプル」だからだ。大きな紙一枚で、いろんな形を表現している。人影(絵)で、脱獄犯の殺人事件のあらましがわかり、路上や家にもなる。さらに窓や扉になり、テレビにもなる。果てはタオルにも封筒にも変化するのだ。野田演出のセンスの良さとアイデアが秀逸である。

 かといって、ロンドンバージョンの背景、美術が悪いわけではない。ゴム紐がマイクになったりフェンスになったり、家の壁も向こう側にも人がいると感じさせる透ける鏡と、合わせ鏡にもなっている。

 もう一つ挙げるとすれば、ロンドンバージョンだと字幕を見なければならず、舞台(芝居)に集中出来ない点。テレビで見るのなら、さほど問題はないけれど。 

 どちらのバージョンも前半は、目まぐるしい展開にまったく飽きない。一見ドタバタとも取れるが、計算尽くされている。「静→動→静→動」の繰り返しの演劇や映画の流れが普通だが、この舞台は、「動→動→動」とダイナミックに俳優が動き回る。たった4人の俳優で数十人の人間に瞬時に入れ代わるスピード感がいい。

 警官の頭を殴りつけた後、脱獄犯の妻と子供を人質にとったことから、イドの「暴力性」が開花する。被害者であったイドが加害者になり、脱獄犯と立場が逆転するのだ。音楽と歌にあわせてイドの踊るシーンがあるが、狂喜乱舞ではなく狂気乱舞(この四字熟語は間違い。)という意味なのか?

 イドの精神と肉体は、(「松田優作さんを語る」を3月5日のブログに書いた)日常に潜む「悪意」 日常に芽生える「殺意」 日常を蝕む「狂気」とピッタリだと思う。

 後半は一変して台詞のまったくない、「静→静→静」の繰り返す、ゆっくりとした時(間)が流れる。(そのシーンは説明しません。観てもらったほうがいいから。)非日常だったのが日常になっていくという恐怖。この脱獄犯の妻でさえ、イドに身を委ねるのだから。

 最後にイドは、脱獄犯と電話の会話で「〜〜次は俺の小指を送ってやるよ。」と自分の指を切断しようとする寸前で終わる。なんとも後味の悪い終わり方だ。劇場で観ていたならば、イヤ〜な気分で劇場を後にしただろう。しかし、この終わり方は野田の意図するところであり、狙いでもある。だから終わり方はこれでいい。意味深な終わり方といったらいいだろう。

 題名「THE BEE」の意味する「蜂」が影絵になって写るのは、イドの恐怖心なのか、それとも幻影なのか?最後の蜂の羽音は、イドの頭の中なのか、心の中なのか?(いろいろ想像してみた。)

 題名でわかることは、蜂の針で人間を「指す」「刺す」「射す」のだ。
 精神も肉体も「殺す」ということだ。 

 この作品を観て「さすが〜野田秀樹!」と思わせる傑作の一本(2バージョンあるから2本か。)だと思う。観て損はない。
2008/03/19 18:28|舞台(芝居)TB:0CM:0

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